あじさい亭3























学年幹事長 竹澤秀明
(17回生)

幕末の三舟の一人「山岡鉄太郎(鉄舟)」の青年時代を描いた時代小説である。一般的に江戸無血開城は、勝海舟・天璋院篤姫・皇女和宮が西郷隆盛の江戸総攻撃を中止させたというのが通説だが、西郷隆盛と海舟の会談前に鉄舟が徳川慶喜の命を受け、総攻撃の中止を懇願したことが大きな要因と言われる。この時の鉄舟の言動により西郷が総攻撃中止の気持ちに傾き、最終的に海舟との会談で中止が決定したと思われる。この西郷を懐柔させた「豪胆さと先を見る目」を持つ古武士・鉄舟の若き日の物語である。

現在第3巻まで発表されている。江戸小石川にある「あじさい亭」という煮売屋(惣菜販売を主とする居酒屋)の主人徳蔵と手伝いの娘お菜の目を通して、鉄舟を中心に幕末の江戸を描いている。

歴史好きの私に取っては興味が尽きない人物が登場する。鉄舟は9歳で真陰流、16歳で北辰一刀流、21歳で幕府「講武所教授」そして明治になって無刀流を開き、千葉道場で鬼鉄といわれた剣豪である。しかし剣術以外には無頓着で石高の低い山岡家の婿養子となった。妻女となった「お英」も似たもの夫婦のさいたるもので、極貧幕臣生活を嫌うどころか、楽しんでいる。お英の兄が高橋泥舟(山岡家から母方の高橋家を継ぐ)で鉄舟の義父、山岡静山の弟である。静山、泥舟ともに槍術の使い手である。両家は隣同士。このころ尊王攘夷の風が吹き始め、幕臣である鉄舟、泥舟ともに尊王の心を持っていたがため、清河八郎なるものと接触することになる。しかし清河は「尊王攘夷」でありながら幕府を騙し「浪士組」を組織させ京都に上京させたが、攘夷を強めたため幕府ににらまれ江戸へ戻らされた。この時指揮していた泥舟、そして清河と親交があった鉄舟も責めを負い謹慎処分とされた。

鉄舟の一部のみを知る私にとっては、目から鱗である。また清河と鉄舟の関係、特に幕府に追われる清河をかくまったが暗殺される。しかしその首をさらし首にしないよう対応した。また清河が組織した「虎尾の会」も書かれており、改めて歴史を調べる心境になった。ノンフィクションのなかのフィクションもあるが、歴史の流れに沿って興味を持って読み進めた。江戸総攻撃を中止するよう西郷に直談判に行く下りの「望嶽亭」からの脱出とその際ピストルを預ける場面は、私が東海道53次を旅した際、見学させてもらったので記憶に残る下りである。

また江戸の見世物小屋、団子茶屋などを通して庶民生活が生き生きと描かれている。そこには全編を通して「情の鉄舟」が描かれている。この後のシリーズでは幕末から明治の鉄舟が描かれると思う。坂本龍馬には中岡慎太郎、勝海舟には山岡鉄舟がいた。もっと鉄舟を見直し、前面に出す作品があっても良いと思う。

 

山岡鉄舟顔写真